Classiques japonais avec furigana
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ぜにがたへいじとりものひかえ
銭形平次捕物控(八)お珊文身調べ
野村 胡堂
Lisez 銭形平次捕物控(八)お珊文身調べ (ぜにがたへいじとりものひかえ) de 野村 胡堂 (のむらこどう) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 143 455 caractères · 290 écrans
「…………」
不意討を喰らって、ガラッ八は往来の真ん中に立ち辣みました。秋が深いにしても、朝の光の中に鬱陶しく頬冠り、唐桟を端折って、右の拳で弥蔵をきめた恰好は、どう贔屓目に見ても、あまり結構な風俗ではありません。
「私の家はここよ、後を跟けて来たんならもうお帰り」
「ヘエ――」
「何て間抜けな狼だろう」
「あッ」
虹のような啖呵を、ポカンとしている向う額に浴びせて、娘は路地の中へ颯と消えてしまいました。おも影に立つ鮮やかさに、しばらくは後を追うことも忘れて、娘の言葉を噛み締めるように、ガラッ八は立ち止まりましたが、
「あッ、いけねえ」
路地へ飛込んだがもういけません。中は羊腸たる抜け裏、娘の姿は本当に虹のように蒸発してしまったのでした。
「畜生め」
大きく舌打を一つ、せっかく引受けた大仕事を縮尻ってしまって、面目次第もなく、朝の元の大通りへバアと出ると、ちょうど通りかかったのは先ほどの武家、――親分の平次が手習師匠に見立てた五十前後の浪人者です。
「この武家を跟けてやれ、新造の尻を追い廻すよりは、気がとがめないだけでもいい」
勝手な独り言を言いながら、少しやり過して、件の七つ下がりの羊羹色浪人の後から跟け始めました。