후리가나로 읽는 일본 고전
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まつのやろはち
松のや露八
吉川 英治
吉川 英治의 松のや露八(まつのやろはち)을 후리가나와 함께 일본어로 읽으세요. JLPT N2. 단어를 누르면 뜻이 나옵니다.
N2 · 고급 · 신자체·신가나 · 125,597자 · 253화면
夕波一刻
一
すると、静かに襖を開けて入って来た者がある。渋沢栄一であった。渋沢の後ろには、誰か、洋服姿の痩せぎすな若い官員が襖の外に佇立んで待っていた。
「これはいかん、酔いつぶれて、正体もない。久しぶりの邂逅だし、話をしてもわからんだろう。明日にでも、どこかへ呼んで会ったらどうだね」
露八の酒くさい息をのぞきこんでから、渋沢は、襖の外にいる者へ云った。
「は」
若い官員は、考えていたが、
「ご親切、ありがとう存じます。ですが、明日は、兵部省との打ち合わせがありますし、明後日は、早朝に横浜から出帆する船へ乗り込まねばなりません。酔いのさめるまで、待っておりましょう」
「そうかの、じゃあ、わしは一足先に帰る」
「どうぞ」
「――帰るが、酔いがさめたら、露八によろしく云ってくれ、どうにでも、身の立つことなら相談にも乗って上げるから、邸へ遊びに来いとな」
「はっ、いろいろと……」
渋沢は、そう云って去った。
顔いろの蒼白な若い官員は、きちんと、洋服のズボンを折って露八のそばに坐っていた。鼻下に八字髭を蓄えて、唇の紅い三十二、三の開化の紳士だった。
三十分経つ――一時間経つ――冷やかな銀襖に秋の日が暮れかけて、大川の櫓の音や川波が障子ごしに薄ら寒くしのんでくる。