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さんまいつづき
三枚続
泉 鏡花
「大阪毎日新聞」1900(明治33)年8月9日~9月27日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 63,572 字 · 124 页
十三
愛吉は痩せたのを高胡坐に組んで開き直る。
十三
「震えるない震えるない、何もそう、鮭の天窓を刻むようにぶりぶりするこたあねえ、なぐり込に来たのなら、襷がけで顱巻よ、剃刀でも用意をしていらあ。生命に別条はねえんだから騒ぐにゃあ当らねえ、おう、奥様ちょいと、おい、先刻のようにお暑うございますとか何とか謂って、その団扇で私をば煽いでくんねえ、煽ぎねえよ、さあ煽げ、煽げ、煽がねえかい。」と、愛吉は目の色の変るまで対手の三人を屹と睨めて、手も足も突張返った。
「母様、」と才子は衝と身を起しざまに、愛吉を除けて起った。
「貴郎もお立ちなさいまし、狂人ですわ。」と、さも侮り軽んじたごとき調子で落しめて言うのに和して、
「狂人だ。」
「うむ狂人じゃ、巡査に引渡すが可いじゃろ。」
「さあ、引渡せ、そうでなきゃあ団扇で煽げ、」と愛吉は仰向けに寝て大の字形、挺でも動きそうな様子はない。謂う処に依れば才子に思うさま煽がせさえすれば、畳に生した根も葉も無く、愛吉は退散しそうに見える。
按ずるに煽ぐという字は火偏に扇である、しかればますます奴のが盛になっても、消えて鎮まるべき道理はないが、そのかかることをいい、さることを為すは、深き仔細があったので。