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さんまいつづき
三枚続
泉 鏡花
「大阪毎日新聞」1900(明治33)年8月9日~9月27日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 63,572 字 · 124 页
二十
「悪くない、うむ、そうすると、」
「いつも交返すんだから盲目め、声を知ってまさ、かねてお気にゃあ入らなかったと見えて、
(ああ、弾くがね、お鳥目をおくれ。)
(何を!)
(私の新内はばら銭じゃあ聞かせないんだよ。)ッて言いましたぜ、先生、御存じじゃありませんか、年増で縁日を稼ぐ癖に、好い女でさ。」
二十
ここに愛吉が金之助に話したことは、ちょうど二年前、一昨年の晩春の事で。
愛吉は今に到ってもおとなしくない、その時分もおとなしくなかったが、恐らくいつまでもおとなしくないのであろう。
いうがごとく、縁日稼の門附も利かない気で、へべれけの愛吉が意にさからい、価を払わなければ術は見せぬ、お銭がなくっていて、それでたって凄い処を聞きたいなら、前に立って提灯は持たずとも、月夜に背後からついて来て、お花主の門でやる処を、こぼれ聞きに聞いたら可いと、愛嬌の無いことを謂ったそうな。
二振の斧と、一挺の剃刀、得物こそ違え、気象は同一、黒旋風紋床の愛吉。酒は過している、懐にはふてている。殊に人立の中のこと、凹まされた面は握拳へ凸になって顕われ、支うる者を三方へ振飛ばして、正面から門附の胸を掴んだ。