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さんまいつづき

三枚続

泉 鏡花

「大阪毎日新聞」1900(明治33)年8月9日~9月27日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 63,572 字 · 124 页

青空文庫

十一

」と鯉呑麩の口、蕪村がいわゆる巨口玉を吐く鱸と相似て非なるものなり。

十一

青年はこれに答うる術も知らぬ状に、ただじろじろと後室の顔を瞻ったが、口よりはまず身を開いて逡巡して、

「ええ、からもう、」というばかり、逡巡の上に、なおもじもじ。

「一体何じゃ、内へござる他の方とはちと気風が違っていなさるから、その辺が何となく御身分のある方とはお交際がなさりにくいのじゃ、それも心懸一ツで、の、ああどうともなります。」と念を入れて喋舌れば顔も動くし、白い切髪も動いたのである。

「さようでございましょうか、へい、」といってこの泥に酔ったような、哀な、腑効ない青年は、また額を拭った。汗は流るるばかり、ほとんど取乱した形に見えたので、夫人才子は、さすがに笑止とや思しけん、

「貴方まあお羽織をお脱ぎなさいましよ。」と深切におっしゃりながら、団扇使の片手煽に、風を操るがごとくそよそよと右左。

勿体ない、この風にさえ腰も据らないほど場打のしている者の、かかる待遇に会して何と処すべき。

青年はそわそわしたが、いつの間にか胸紐を外して、その五ツ紋を背後にはらりと、肩を辷らして脱いだのである。