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さんまいつづき
三枚続
泉 鏡花
「大阪毎日新聞」1900(明治33)年8月9日~9月27日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 63,572 字 · 124 页
三十二
鶏を抱えてます、そいつはただ一言お夏さんに頼まれたから起った事。
ホイ何のこッた、行くにも帰るにもこの騒ぎに揉まれちゃあ、羽も翼も坊主にならあ、と吃驚して、背後は見ないで、抜けたり、潜ったり、呼吸ぐるしいほどの中をもぐって出て、まず水のある処へ行きましたがね。
水ッてのは何、深川名物の溜池で、片一方は海軍省の材木の置場なんで、広ッ場。
一体堀割の土手続で、これから八幡前へ出る蛇の蜿った形の一条道ですがね、洲崎へ無理情死でもしに行こうッて奴より外、夜分は人通のない処で、場所柄とはいいながら、その火事にさえ、ちっとも人間が歩行きません。気のせいか、かッかッと燃える中に、木竹の折れる音もするほど近間で居て、それで何と私の跫音にばらばら蛙が遁げ込みます。水の音を聞くと一杯のんだ気になって、一呼吸吐いたんですが、――はてな。」
三十二
「そこでお夏さんだ、どうなすったろう。私がこの慌て方じゃあ二階に残った女連は気絶たかも分らない。お夏さんはお夏さんで、雛を大切に取出しそうな権幕だったが、火急にも何にも内裏様一個抱く時分にゃあ、火の粉を被んなすったに違いがないと、さあ、心配になって堪りません。