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さんまいつづき

三枚続

泉 鏡花

「大阪毎日新聞」1900(明治33)年8月9日~9月27日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 63,572 字 · 124 页

青空文庫

三十九

と言いかけて打微笑み、

「何にも分らない癖に、おもしろいかい、そうかい。これは相撲の番附、こちらが名人鑑、向うが凌雲閣、あれが観音様、瓢箪池だって。喜蔵がいつか浅草へ供をして来た時のようだ。お前あの時分はおとなしかったっけ、この頃はまるで嬰児のようじゃあないか、夜啼をして、良い児だからもうちっと遊んだらあっちへおいで、可いかい。夜になって塒へ入るのは何もかわったことはないけれど、何だか淋しそうで可哀相だねえ、母様と二人ばかしになったって、お前、私が居れば可いじゃあないか。」と、いつか独言をいいながら段々軒に近づいた。

「まだ見たいのかい、さあ、何にしよう、これは軍の絵でございます、」と謂ってお夏は胸を反らし、黒目勝なのを仰向くと同時に、両手で上へ差上げたが、翼の尖が鬢にかかって、

「あら髪がこわれるよ。」と思わず手を放した、飼鶏はどんと身を落して、突立って土間へ下りた。

三十九

溝石で路を劃って、二間ばかりの間の軒下の土間に下りた、蔵人は踏留まるがごとくにして、勇ましく衝と立ったが、秋風は静々と町の一方から家毎の廂を渡って来て、ちょうどこの小さな散際の柳を的に、柳屋へ音信れたので、葉が一斉に靡くと思うと、やがて軍鶏の威毛を戦き揺いで、それから鶏を手から落した咄嗟の、お夏の水髪を二筋三筋はらはらと頬に乱して、颯と