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ちからもち

力餅

島崎 藤村

「力餅」研究社、1940(昭和15)年11月

N3 · 进阶 · 新字新假名 · 65,974 字 · 130 页

青空文庫

『力餅』の後に

ました。

『力餅』の後に

長々とわたしも話しつづけました。この本は作者の年若いころからいろいろな人に会って見たお話を中心にして、その前後に十と十二とのお話を添えてあります。それを八章に分け、つごう八十五のお話がこの本の中に入れてあります。

そう言ってはすこし自分流儀に過ぎるかもしれませんが、本というものはその中に書いてあることがすっかりわからなくても、わからないことはわからないなりにとどめて、読んでみていただくのがいいかと思われます。これを皆さんの着物のことにたとえてみますと、この八十五のお話の中には、すこしゆるやかに仕立てておいた物も入れてあります。今すぐそれが皆さんの背丈に合わないまでも、すこしたって、また取り出してみてくださるなら、きっと「うん、ちょうど、いい」と言ってくださる時もまいりましょう。皆さんは、ずんずん大きくなるさかりですから。

この本の中には、第二章第十一話の『白い犬の話』のように古い言い伝えをもとにして書いたものもあり、第八章第十話の『新しい建築の話』のようにドイツの詩人ゲーテのことばから思いついて書いたものもあります。

峠のじいさんばあさんがおもちをついて小屋に休んで行く人を待つように、わたしが皆さんにあげようと思う『力餅』