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ちからもち
力餅
島崎 藤村
「力餅」研究社、1940(昭和15)年11月
N3 · 进阶 · 新字新假名 · 65,974 字 · 130 页
三 古い池
わたしは、裏の井戸ばたのほうから洗いたてのかぶを運んでくる下女やじいやを思い出し、それを切り分けたりたるにいれて塩をふりかけたりする母たちを思い出しました。
三 古い池
少年の日のことも、それからそれとわたしの胸に浮かびました。
竹馬に、ネッキ(木曾ではショクノという)に、氷すべりに、手おけやたるのたがの古いのを応用した輪回しなぞに、山家の子供らしい遊戯にはわたしも事を欠きませんでした。
わたしの古い家の裏は、じいやの働く木小屋や竹やぶに続き、一方は稲荷のやしろに続いているようなところで、樹木も多く、近所の子供もよく遊びに来ました。そこに古池がありまして、こけむした石がきの間からは雪の下が毎年のように花をたれました。ある日、となりの家の子とともに、わたしはその池のまわりを遊び回って、いかにもかわいらしく咲いている雪の下が目についたものですから、石がきづたいに花をとろうとして、アッと思うまもなく古い池の中へすべり落ちました。その池はおとなの背がようやく立つほどの深さがありましたから、兄がそこへかけてきて、救い出してくれなかったら、わたしはどうなったか知れません。