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おおおかえちぜん

大岡越前

吉川 英治

「日光」1948(昭和23)年9月~1949(昭和24)年12月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 218,436 字 · 437 页

青空文庫

いい評判だって、ちッたあ、あらあな」

「何か、挙げたかい、南の方でも」

「いや、捕物じゃねえが、この間、大工町の仕出し屋太郎兵衛が失火を出し、その罪で、五十日の手錠をくッた。手錠は、微罪だが、もし手錠を自分で外したりしたら重罪だ。……それを太郎兵衛のやつ、どうした量見か、毀してしまやあがった。さア大変だ。軽くても、遠島は免がれまいと、町名主、五人組につれられて、白洲へお詫びに罷り出ると、大岡様は、てんで一同の詫び言を耳にもかけてくれねえッてんだ」

「ヘエ、そして」

「粗忽者めが、転ンだらなぜその通り申し立て、もしまた、膝に怪我でもしたら、医者の診立書をも添えて、申し出ないか。――太郎兵衛、転んだに相違あるまいと、叱って下すったので、一同は、はっと気がついて、へい、仰せの通りでございますと、大岡様の御仁慈を、みな心からありがたがって、何事もなく帰って来たというこった」

「なアんだ、そんな事かい」

「まだ一つ、この頃、聞いたことがある。下谷辺の魚屋が、八軒もの寺へ、貸しが溜り、どう責めても払ってくれねえので、八軒で二百両近くになる貸分の帳面を証拠に、大岡様へ願い出たんだ。