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ごくちゅうへのてがみ

獄中への手紙

宮本 百合子

08 一九四一年(昭和十六年)

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 230,599 字 · 458 页

青空文庫

生理的に苦しい気持がします。その中の一通がなくなったとして、無邪気にどうしたんだろうなどと誰が思えるでしょう。私が先にあすこをいやがった理由の一つにはこれもあったわけです。そして、今益※(二の字点、1-2-22)いやよ、この点は、ね。何たるいやな場所と思います。このいやさは我ままではないでしょう? 同感をもって下されるでしょう?

このお手紙に、雨降りでやや寒い。とあります、きょうも雨降り。ややさむい、方ね。「ねぎらい」の描写を思い出していらっしゃるところ、一寸お話したように、大変うれしくやさしいと思うの。一緒によんだ同じ詩でも、印象の濃い行は、独自で本当に微妙なものだと思います。でも、こう書かれていると、あの雄蜂のつややかな躯やすこしつかれて柔かく重くなっている姿など、何とまざまざと浮ぶでしょう。芸術家が心や目に刻まれたものを丹念に再現してゆく力は、窮極には愛からしか湧かないものなのね。それが芸術の精髄的な本質なのね。「よくぞ生れ来たる」この詩は抒情歌の形でかかれてはいますが、実質には雄勁なものが一貫している作品ですね。反対に、テーマが雄勁であり得ているからこそ抒情詩としての流露も豊饒、豊麗であるということにもなっているのでしょう。