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ごくちゅうへのてがみ
獄中への手紙
宮本 百合子
08 一九四一年(昭和十六年)
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 230,599 字 · 458 页
八月十三日
月曜日にはお愛さんをつれて林町へ行って、泊って、寿江の荷造り手つだいます。
八月十三日 〔巣鴨拘置所の顕治宛 目白より(封書)〕
八月十三日 第三十五信
お手紙けさ、ありがとう。本当に今年の天気はどうでしょう。私も汗の出ないのには今のようなのが楽ですが、でも心配ね。こんなひどい湿気は決してあなたのお体にもよくはないでしょう。つゆ時と同じですもの。
きのうは、夕方八重洲ビルへ行って、国男と寿江子と紀とで夕飯をたべました。国さんの誕生日でした。天気があやしいので雨傘をもって、無帽でバス待っているところを眺めたら憫然を感じました。髪の白いのはかまわないが、ふけたこと。あなたなんかどんなに見違えになるでしょうね。私の弟だと思うひとはないのも無理ないと思います。余りひどく呑んだりすると、あんなに早く年とるのかしら。衰えているというのではないのよ。精悍なのですが、輝き出しているものがないというわけです。一昨年の誕生日には咲枝の兄夫婦をよんで庭で風をうけながら夕飯をたべて、夜なかに咲枝が産気づいた年でした。その前の年はやっぱり咲枝たち開成山に行っていて、私が国男さんを神田の支那へよんで、緑郎とおもやいでゾーリンゲンのナイフをおくりものにした年でした。