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ごくちゅうへのてがみ
獄中への手紙
宮本 百合子
08 一九四一年(昭和十六年)
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 230,599 字 · 458 页
十一月一日
もうお祭りさわぎとして、世話やきずきの小母さんの活躍舞台より以上の実感があって、却ってワイワイしなくなっているというところもあるのでしょう。
林町の裏から動坂のひろい通りへ出る迄の一帯は本郷区内の危険地区の一つですって。何しろ、あの裏通りは御存じのとおりですから手押ポンプしか入らないからだそうです。従って、うちも裏から火が出て、冬のことではあり北西の風でもあれば、ことは到って簡単というわけでしょう。そういうときになれば、私は体と手帖とエンピツと封緘さえあればいいと思って居ります。
では火曜日にね。眼をお大事に。泉子からよろしく。
ね、ふっと原さんが泉子という名だったと思いました。原さんかんちがいしたら可笑しいわ、ねえ。イヅミ子に可哀そうだし、ね。
十一月一日 〔巣鴨拘置所の顕治宛 駒込林町より(青木達彌筆「薄」の絵はがき)〕
きょうは(一日)天気がはっきりしないので国府津で一年も閉めこまれたままの布団を干せそうもなくて大弱りよ。それでも出かけるのでしょう。出かけてしまえば又それで気がかわるのでしょうが。
眼の本いかがなりましたか?
この間本やで計らずオーエンの『自叙伝』