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ごくちゅうへのてがみ

獄中への手紙

宮本 百合子

08 一九四一年(昭和十六年)

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 230,599 字 · 458 页

青空文庫

十月十八日

あしたはお天気がいいといいと思います。では火曜に。

十月十八日 〔巣鴨拘置所の顕治宛 駒込林町より(封書)〕

十月十八日  第四十五信

きょうは雨がわり合いい心持の日です。

いかが? そちらのきのうはいかがな一日でしたろう。私はね、早くおきて、午前中ずっとよみかけのものを読んでノートとって勉強して、午後から太郎をつれて目白へ出かけました。

太郎は学校が近くて、通うのに電車にのらず行っているものだから、混んだ電車なんか迚も不馴れで一生懸命でキョロキョロつかまえた手を決してはなさないの。

目白へ行って、顕微鏡で人間の血液、兎の血液、蛙、やもりの血を見たり、自分の爪の間にたまった黒いものの中にどんなこわい妙な形のものがあるかを見たり、髪の毛は松の樹の如し、という見聞をしたりして、お菓子を三つもたべて五時ごろ出かけて、目白の通りのビリヤードのすぐよこの鳥常という昔から出入りの店へよって、御馳走のための買物をして六時一寸すぎかえりました。

二階へあがったらね、となりの皆で食事する方に奇麗な菊がどっさり鉢にさして飾ってあります。火をおこしおなべかけて呼んだら、国男さんと太郎が横一列にあらわれて、どう? ちゃんと並んで坐って合唱なの。