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ごくちゅうへのてがみ
獄中への手紙
宮本 百合子
08 一九四一年(昭和十六年)
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 230,599 字 · 458 页
八月十六日
八月十六日 第三十六信
きのうはタイ風が岡山の方を荒して東京はそれたそうですが、きょうの風は何と野分でしょう。すっかり秋になりました。私はうれしいうれしい心持です。この乾いた工合がどんなに心持よいでしょう。ひとりでにうたをうたうほどいい心持です、暑くはなかったけれど、しめり気がいやで、本当にさっぱりしませんでした。せめてこれからカラリとした初秋がつづけば、私は元気になって毎日うんすうんすと仕事が出来ます。
この間うち、こまかいものを書きながらちょいちょい小説をよんでいて、大した作品ではなかったけれど、いろいろ得るところがありました。作家のテムペラメントということについて、何となし印象がまとまりました。女の作家、同じアメリカの作家でも、三つの世代がはっきりわかるようですね。ヴィラ・キャーサなんかの世代、バックの世代、マックカラーズの世代という風に。第一の世代の人たちは小説には特別な感情の世界をきずきあげなくては満足出来ず、お話をこしらえていた人たちの時代。バックの世代にはもっと現実に真率になって来ていて、お話はこしらえないけれども、やはりあたりまえに話すのと小説に書くのとは、気のもちかたがちがっていて、問題なりは、それとして問題として作品の中に存在させられた時代。