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ごくちゅうへのてがみ
獄中への手紙
宮本 百合子
08 一九四一年(昭和十六年)
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 230,599 字 · 458 页
九月十日
快活が時にやり切れなく単調である所以ね。明るさは光りだからそうではないわ。色を照し出しますもの、ね。人は所謂朗らかではなくて明るくあり得る筈です。そういう明るさ、渋い明るさ。男らしさに通じるもの、それは人間の美しさだから女にも通じているのよ、女がもしもう少し動物的でなくなれば。或はそのことを自分で心づけば。
ヘミングウェイの小説は、あれこれ濛々的文字の氾濫の折から実に快うございました。
隆治さんこちらへ珍しく二枚つづきのハガキくれました。休み日でレコードを戦友がかけているそのわきで書いているのですって。七月二十六日に島田から書いた長い手紙への返事よ。きっとあんなに細かく書いてあるのにペラリと一枚ではわるいと思ったのね。この間あなたのおくりものやいろいろよかったと思います。では明日。きょうは乾いた天気になりました。
九月十日 〔巣鴨拘置所の顕治宛 本郷区林町二一より(封書)〕
九月十日 第三十八信
随分久しい御無沙汰になりました。この前は八月二十八日に書いたきり。あとはパタパタさわぎで、あなたもくしゃみが出るほど埃をおかぶりになったというわけです。