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ごくちゅうへのてがみ

獄中への手紙

宮本 百合子

08 一九四一年(昭和十六年)

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 230,599 字 · 458 页

青空文庫

四月七日

洋裁は七日迄春の休みです。十一月一杯で卒業よ。メン状くれる由。そしたら田舎でひとに教えられるとたのしみにして居ります。

周子さんがもうそろそろ来るころです。その話をかこうと思っていたら、こんなに二通も到着で、私は歓迎にいそがしくて、紙は一杯になってしまったわ。何とひどい風になって来たでしょう。東京の春は、これでいやね。女の人はちっとも美しくなれないわ、風に吹きまくられて。風が吹くと、ほんとに日本服の愚劣さを感じます、衣類が人間の肉体を守るのではなくて、衣類をまもるために女は体を折りかがめて苦しむのですもの。

では、マタアシタ(これは太郎が夕方友達とわかれるあいさつ。)

四月七日 〔巣鴨拘置所の顕治宛 目白より(封書)〕

四月三日(紙がこんなで御免なさい)

今は夜で、机の上のアネモネの花がつぼんだために花茎をぐっともたげたような形でかたまっています。

あちこち宿題の手紙をどっさり書いて、それから仕事をしようとしてその下準備にレオーノフの「スクタレーフスキイ教授」という小説をよみはじめ、いろいろ面白くてずっとよみつづけているのですが、よみながら私の気持は二重に働いていて、どうしてもねじまがりにくい方向へ自分の頸をねじまげようとしているようで、どうも駄目だ、何故だろうと考えているところです。