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ごくちゅうへのてがみ

獄中への手紙

宮本 百合子

08 一九四一年(昭和十六年)

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 230,599 字 · 458 页

青空文庫

六月十八日

これまでだって。親のいた頃だって林町にいきりになれなかったのですもの。家の件は、こういう工合に推移して来て居ります。何とか、こっちの方向で解決したいと思います、そして、あなたが「朝の風」についてあの女主人公が部屋借りにうつらなかったことを必然がないと云っていらした、そのことを思い当ります。そうなって行って、それではじめてわかるという道があるものなのね。では明日。

珍しくきょうはGペンでかいていて、その方が万年筆よりなだらかでした。

六月十八日 〔巣鴨拘置所の顕治宛 目白より(封書)〕

六月十八日  第二十九信

大笑いね、私は再び、というよりは寧ろ忽々に舞い戻って目白のテーブルでこれをかいて居ります。

昨夜、おばあちゃんが八時三十四分でかえり、それを上野へ送って行って、きのうから三人となりました。家が見つかる迄この調子でやって、もう五日か一週間したら石川さんという若いすこしはましな派出婦が来る予定です。この子は、ものをかく女のひとの暮しも知っているからこの間うちのひとのようにおそろしいことはないわ。でも、その恐ろしい人さえ、大変いいうちと云って会に好評をしているので、あのひとさえそういうならと、案外石川さんを予約出来たりする様子です、虎穴に入らずんば、のところがあっておかしいわね。