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ごくちゅうへのてがみ
獄中への手紙
宮本 百合子
08 一九四一年(昭和十六年)
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 230,599 字 · 458 页
十一月三日
というものを見つけました。珍しいと思いましたが、知っている人にとっては格別興味も少い本なのかしら? あなたはいかが? ノートや本やをもって出かけるのよ。それからお米も。タクアンも。
十一月三日 〔巣鴨拘置所の顕治宛 神奈川県国府津前羽村前川より(封書)〕
十一月三日
今度は何しろ同勢が同勢なので、おっかさん役おかみさん役兼任のため、なかなか忙しい思いをしました。
一日の午後、太郎が学校をひけてかえって来るとすぐ出かけ一時四十分の小田原ゆきをめがけて東京駅へ行ったところ、列がずーっとむこうの端れで、最後尾の車に、しかも立ちづめで二の宮迄よ。どこかの中学生の練成道場行がのっていて、お米を忘れたとさわいでいる四年生もあり、という工合。太郎だけよそのひとのわきにわり込ませて貰ってリュックをやっとおろして、小さい三角型の顔してのっているの。太郎は人ごみだの何だのの中だとそれは情けない情けない顔して、あっこおばちゃんを歯痒ゆがらせます。ヤアこんでるんだなアというような、からっとしたところなくてね。いとど物哀れに小さくなるのよ。私はそういうのは無視なの。いたわったりしないの。