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ごくちゅうへのてがみ

獄中への手紙

宮本 百合子

08 一九四一年(昭和十六年)

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 230,599 字 · 458 页

青空文庫

十月十一日

栄さんたら、どんな短いものでも書くときは髪を洗いたいんですって。可哀そうに! 三四冊の本のためにあんなになるなんて! しかも内からではなくて、外からあんなになるなんて。私の手を洗いたい癖の方が余程安全ね。何か書いているとき何度洗うでしょう、実際膏汗も出るのでしょう。いろんな細かい仕事をする人が神経の調節のためにいろんな癖をもっていて、必ずそれをやるのは可笑しい、しかし生理的なことなのね、きっと。近日うちに達ちゃん出かけるかもしれませんね、中旬か下旬に。

夜着、お気に入ってうれしいわ。私は大変気に入っているのよ、では明後日に。

十月十一日 〔巣鴨拘置所の顕治宛 駒込林町より(封書)〕

十月十一日  第四十三信

今夜は四日と八日とへの御返事。本気で勉学をはじめると、それでも御褒美が出るからうれしいことだと思います。

四日のお手紙の諧謔調は、ひとり読むには余り惜しく、かたがた些か恨みのこもる人も居合わせたので(寿)声高らかに音読して一同耳をすませて拝聴いたしました。国男がニヤリとした顔は御覧に入れたく、ああちゃんは(咲)まア可哀想にねえ、あっこおばちゃん、と同情し、寿江子はヘヘヘヘと笑いました。