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ごくちゅうへのてがみ
獄中への手紙
宮本 百合子
08 一九四一年(昭和十六年)
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 230,599 字 · 458 页
ふっとそういう光景を考えました。私たち縁側と云えば、動坂の家で徹夜した朝窓をあけて、外の空気を吸ったぐらいのことだから、これは大変新鮮な空想なの。あなたと縁側とのつながりは。
そんなこと想っていたら、いいや、いいやと思う気持が湧いて来ました、そのときはそのときで、私は縁側のある家を見つけよう、と。そのとき、さっぱりとした縁側のある家を見つけるための根気のいい準備だと思えば、いいや、ということにしてしまおう、と、そういう狡い自分への云いなだめの口実をつかまえた次第です。勿論私の他の考える力は、そんなことではくらまされないから、何だかニヤリといやに笑ってまあ、そんな風に思って見るのも今のところわるくあるまい、と構えているという塩梅です。そんな声、こんな声。なかなか頭の中に休暇日なしです。ああいう条件、こういう条件、何か自分が一つでも気の向くような条件とさがします。
ほかに其々人のいる中での生活も、今の時期になると、或は私にいいかもしれないと。何故なら、私はずーっと自分一人の形で暮していて、お客か、さもなければ、お久さんだのお恭ちゃんだので、たった一人のひとに向って私が自分を投げかけてゆく以外はいやに私の輪廓はくっきりなのよ。