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ごくちゅうへのてがみ
獄中への手紙
宮本 百合子
08 一九四一年(昭和十六年)
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 230,599 字 · 458 页
秋もいいにちがいないけれど、新緑の美しさは夢中にさせるところがあります、そして、日比谷を歩きながら考えてね、新緑を見たいというとあっちこっち田舎を考えるけれど、足まめなら東京のいろんなところに新緑が見られるのだから、と。冬の雪、今ごろの新緑。リズムがあって、それで面白いのね。風景に。
さて、十四日と十六日のお手紙。二つ並べて、私は、さてさてどうしても封緘を見つけなければ、と思います、ハガキだと、おそらくこの四分の一よ、ねえ。それはあんまりと申すものでしょう、ねえ。
十四日のお手紙の大森のひとのこと。ここに云われている点は十分よくわかります。積極に肯定する意味での尤もというところは云わば一つもないでしょうと思います。初めの出発が継続されなくなったということに、プラスは一つもないのは明らかね。その人にしろそれを知らないのではないのです、知っているのよ。でも、人間がある場合、正当である、という判断でだけ一人の人と共に万端やっては行けないこともよくわかりますしね。木や棒のようなひとは、私たちの生活でさえ、頭脳的なもので支えられていると解釈したり、その他もろもろの筋だけで理解しようとしたりする貧弱さですからね。