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ごくちゅうへのてがみ

獄中への手紙

宮本 百合子

08 一九四一年(昭和十六年)

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 230,599 字 · 458 页

青空文庫

執筆者の中には昨今高名を轟かして居られるところの情報局鈴木庫吉中佐殿その他があります。その任にあらずと申さざるを得ない次第でしょう。この頃の本屋は、先生と云って呼ぶ対手なら、と常識もそなえていないのねえ。女性のための講座だからとしきりにいうの。全くおもろしい。おもしろい以上。そのくせ、このごろの出版やはものを知らないと盛に云っているのです。

そのお客の前には私の国文学の先生、たまにお話しいたしましょう? あの方が源氏物語の研究的な本を脱稿されてその話。

その又前は、市場で一生ケン命封緘を貰うことをたのんでいて、丸善に電話かけてあの本まだ来ていないということをききました。

その又前は銀座にいて、これもたまにお話する古田中という母のたった一人の女の従妹のひとのお見舞の品を、風に吹きまくられつつさがし、何にも当にしていたのがなくて到頭ねまきの下に重ねるゆかた買って、それが案外たかくて、ペチャリの財布になりました。もう三年以上床についていて、糖尿の悪化したところへこの間腎臓を患って、今月中には行くと云って約束してあるのよ。お察し下さい。今月あと何日あるのか。