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ごくちゅうへのてがみ

獄中への手紙

宮本 百合子

08 一九四一年(昭和十六年)

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 230,599 字 · 458 页

青空文庫

五月八日

親の言葉がこんなにそのままうつるのよ。大笑いで気味がわるいわ、ねえ。三つの女の子なのよ、やっと足かけ。

北海道のおかあさんの次の息子がやっとお嫁さんをきまりました。その嫁さんをむかえにかえっていて、今につれて来るでしょう、あの母と息子はこういう風に気質がちがうのよ、たとえば嫁さんもらうと、母さんの方は、はア若いものが何かのとき世話になるだもの、皆さんにおちかづきになって貰えというと、息子の方は、きまりわるいよ、田舎なんかからぽっと出た女房。万事そういうちがいがあるの。お嫁さんが来るときっとそういう問答が行われるでしょう、と栄さんと話して居ります。何かいいお祝いを考えましょう。

明日はてっちゃん。火曜に午後。風が吹いていやね。

きょうはくたびれて何となくほーとして居ります。では。

五月八日 〔巣鴨拘置所の顕治宛 目白より(封書)〕

五月八日夜  第二十三信

今九時すこし前で、私はおどろの髪をふり乱してこれを書いて居ります、そうかくと可怖いでしょう? 髪を洗ったのさっき。そしてそれがかわく迄これを書こうというわけです。干いたらすぐねてしまうのよ、きょうは。