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ごくちゅうへのてがみ
獄中への手紙
宮本 百合子
08 一九四一年(昭和十六年)
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 230,599 字 · 458 页
稲ちゃんは三十日の夜十時すぎ蓼科からかえって来た由。買物からかえったばかりとコート着て長火鉢のところにいます、眼をクシャクシャに細めているの、痛いと。何だろう、この夏の私のようなのかしらと思ったら、考えた末、白い雪の反射をうけすぎていると判断しました。ひろいところに雪が白皚々でしょう? それを白い障子のたった明るい室で見て、白い紙の字をよんだり書いたりする毎日だもの! ほんとにめくらになります、リンゴのすったのでひやすことを教えました。
ここでもいろんな買物の陳列でね、何だかいろいろ面白いような妙のような感じです、正直のところ。お金があると買うものって大体自分の体のまわり、家の中のもの、とはじまるのが通例と見えるのね、鶴さんどこか通な店の帽子のお初をちょいと頭にのせ、稲ちゃんに阿波屋の見事な草履買ってやって、時計買ってやって、なかなかいい正月というわけの顔つきでした。品物にでもしておくのがいいわ全く。
今年は年越ソバがないので(出前をさせないのです、ソバ組合のキヤクで、大晦日にかぎり。ソバ粉の値上りを見越して、配給をひかえている由)支那ソバの年越しをいたしました。