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ごくちゅうへのてがみ
獄中への手紙
宮本 百合子
08 一九四一年(昭和十六年)
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 230,599 字 · 458 页
それから持って行くものをつめたりして、それでも皆が床についたのは十一時半ごろ。
今度のはね、いろいろの点が前とちがって又あとから広島へ行くということも出来ないかもしれないし、一切がひっそりで組合のひとたちが「柔うにバンザイやりましょう」と本当にやわうにそれをやるという式でした。だから平服でお出かけよ。いろんなものを、ひきつれて出かけてはいけないというわけで、私たちは駅までときめ、友ちゃんだけがずっと一緒にゆくということにきめて床につきました。二人にとっては眠るどころではない夜であったわけです。
けさは皆早おきで、そこへ速達が来て、あれは実にいいお手紙であったし、達ちゃんにとっても自分の感情の一番まともなところへ、まともにふれて来たものであった様子でした。兄さんにこんな手紙もらった、云いつけは必ず守るからよう申して下さいと本気に云って居りました。そして私もあのお手紙拝見したのよ。手紙のことなど強い実感が響いて居ります。達ちゃんもいろいろと前より深い感情と経験とをもっていて、あのお手紙はどんなにかよかったでしょう。お母さんは、今度達治が戻ったら三人で東京へ行かそう、と云っていらして。