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ごくちゅうへのてがみ
獄中への手紙
宮本 百合子
08 一九四一年(昭和十六年)
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 230,599 字 · 458 页
勉強不勉強もわかるというところがあって。全然新しいちょいちょいしたもの、たとえばこの間野原で見て来た夜の光景だのもそれには入りますから、きっとやはり面白いでしょう。
それはともかくとして八・九は筑摩の仕事です。さもないと、ユリの河童の小皿が乾上りますからね。そっちがこの仕儀に到ったので、ぺちゃんこにもなっているわけです。書きにくいことねえ。実に何だか書きにくい。こんな仕事早くしまって小説をかきたいと思います。第一次の欧州大戦のとき、あの五年間、ヨーロッパのいろんな作家たちは大抵その間まとまった仕事出来なかったのね。すんで、落付いてから。そういう気分が誰でもを支配していたようです。しかし今日はどうなのかしら。少くとも私たちは、済んで落付いてからという風に考えては居ないのが実際です。仕事をつづけてゆく、非常に強壮な神経の必要というものを感じて居りますね。作家の成長のモメントがそこにひそめられている、そう感じます。成長ということは徒らな順応のみではない、そこも面白いところですし。小林秀雄が、歴史小説について、歴史がひとりでに語り出すのを待つ謙虚さが大切ということを云って居ます。