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ごくちゅうへのてがみ

獄中への手紙

宮本 百合子

08 一九四一年(昭和十六年)

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 230,599 字 · 458 页

青空文庫

私は断片的に二人のじいさん二人のばあさんにふれて居りますが、いつかの機会にもっと系統だててしらべて祖父、父というものを歴史的に書いてみたいと思います。

室積の海の風にふかれていて、私はやはりそんなこと思いました。室積生れのおばあさん、野原の国広屋、それからそれへと。そして、その生活の物語を書いておくのはやはり私の仕事だと。宮本のうちの子供たちは、それをどんなに面白くよむでしょう。過去の生活の歴史を知るということは、人の一生が空虚でないということを感じて、少年にはいいわ。輝にそういう誰もしないおくりものをしてやりたいと思います。経済上の没落を、おちぶれと見ないだけ、おちぶれないだけの気魄をそういう物語の中からも知らしておいてやることは大切だわね。何しろアキラは、後代の子孫ですよ。オリーブ油を体にぬられて育てられているのですものね。人間として一番平凡になられては閉口ですからね。歴史のひろくゆたかな波が私のようなものをその家族の中に運んで、そのひとが、そういう物語も書いてあるというのは、あとでは随分面白いことだと云えるでしょう。二つの立派な長篇の題材です。