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ごくちゅうへのてがみ

獄中への手紙

宮本 百合子

08 一九四一年(昭和十六年)

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 230,599 字 · 458 页

青空文庫

この頃は朱肉のいいのがなくなりました。朱もよそから来ていた由。日本画家はキューキューの由です。金箔はもう夙に日本画の世界から消えて居ります。

ケーテの伝が昭和二年の『中央美術』に出ていていろいろ面白いと思います。一八六七年にケエニヒスベルグで生れているのね。祖父さんというひとはドイツの最初の自由宗教的牧師で、お父さんというのは判事試補試験にパスしているのに、そういう立場のためにそれをやめて石屋の親方で暮したのですって。一八八五年というから十九歳位のときベルリンで画を修業しています、コルヴィッツというのは兄さんの友達なのね。この人は医者です。ベルリンの労働地区の月賦診療所をやっていて、そこでケーテは実に生々しい生活の姿、母と子との姿にもふれたわけでした。一九三〇年頃はケーテがそこに住んでいたのですね。六十歳のお祝は盛にやられたらしい様子です。一部の人はこの卓抜な婦人画家を、宗教的画家ときわめつけようとしたらしいこともかかれて居ります、人類愛のね。

文学の面から多くのものをうけているそうです。一八九七年のハウプトマンの「織匠」の絵で認められたのですって。