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ごくちゅうへのてがみ

獄中への手紙

宮本 百合子

08 一九四一年(昭和十六年)

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 230,599 字 · 458 页

青空文庫

今夜は障子が骨だけなの。明日張れます。そしておしまい。それで当分は、もう知らない、というわけよ。二階を片づける、片づけたものをもってゆく場所がない。そのために土蔵の中を片づけなければならない。そういうおそろしい因果関係で、つまるところ私は二階から土蔵の中までの掃除をしなければならなかったのですもの。こんな引越しなんて天下無類です。そしてすっかり片づけの要領を覚えてしまったようです。ああ、ほんとうにひどかった。こういう折でもないと、家じゅうの邪魔ものをみんな二階へぶちあげるきりで更に何年間かを経たでしょう。この部屋も全く別のところのようです。よかったわ。お化けじみたところは消散してしまいましたから。

さて、九月二日、目白の方へ下すったお手紙。この前の手紙にこの手紙へのこと素通りしてしまっていたって? 二日のお手紙はそういう可能を自分の条件の裡に発見し具体化してゆく心持に直接ふれて来ていたのに。あとで手紙書いたときは、何しろ手拭で頭しばって働いている間みたいで、きっとおとしてしまったのでしょう。

随分あっちこっちから考えた上のことですから、本当にこの最少限の最大限というような生活の奇妙な条件を充実して暮したいと思います。