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ごくちゅうへのてがみ

獄中への手紙

宮本 百合子

08 一九四一年(昭和十六年)

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 230,599 字 · 458 页

青空文庫

きっともう随分大きくなったことでしょうね。

稲子さん飛行機で満州国のお祝の『朝日』の銃後文芸奉公隊というので出かけました。同勢は林芙美子、大田洋子、大仏次郎、横山健一。

鶴さんは甲府とかへ講演に出かける由。おばあさんが丹毒にかかっていて、顔がすっかり張れた由。(これは佐藤さんからの電話ですが)

栄さんはこの頃ひどく疲れているそうです。春子さんという、学校は(小豆島の)一番でとおした女の子が手つだいに来ていて、それが大したもので、それでつかれるのですって。学校の一番も眉つばねえ。栄さんでも手に負えないものに出合うかと何となくユーモアを感じます。まだどこへも行かないのよ、引越してから。

きょうは又雨になりました。毛布どうしたかしらと思って居ります。けさの床の中で暫く目をさましていて、あることを考えました。

この前の前の手紙で、詩集の話が出て、どうしてあの詩人は秋冬を余り季節としてうたっていないのかと思うと云っていたでしょう。考えて見て、一つ一つの詩について見なおすとね、あるものは肌さむい秋だの凩の冬だのが季節としての背景にはあるのだけれど、詩は、いつもそんなつめたさやさむさを忘れて様々の美しさへの没頭でうたわれているのですね。