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ごくちゅうへのてがみ

獄中への手紙

宮本 百合子

08 一九四一年(昭和十六年)

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 230,599 字 · 458 页

青空文庫

夕方、寿江子へのおはがき。道後のことが書いてあって又行ってみたくなったわ。この夏、海のきらめくのを眺めながら、室積で、すぐ道後に行って見たくなりましたっけが。電車で行くんでしょう?「坊っちゃん」のなかにも、そこいら辺が出ているわね。太郎を今に虹ヶ浜へつれて行って泳ぎを教えようというのが目下のところ私の憧れよ。太郎もたのしみにしています。

冨美子が学校にいる間だと、あの子が上手く教えてやってくれるだろうからいいのだけれど、十歳前ではおっかさんからはなしてつれてゆく自信がないから。太郎には乗馬と泳ぎと機械体操だけは、ちゃんとしこんでやらなくてはいけないと本気に思っているのだけれど、太郎は運動ぎらいで、運動会の予行演習があると、おなかが痛くなってしまって(※(疑問符感嘆符、1-8-77))早びけしてかえって来てしまうのよ。頭からっぽのスポーツ好きも悲しいけれど、こういうのも些か苦手ね。これからの男の子はどういう面からも自分の肉体を水陸でこなしてゆける実力をもたないと、或る場合、下らなく消耗しなければならないのにね。この間九州で汽車の事故がおこったときだって、死んだのは女、子供よ。