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ごくちゅうへのてがみ
獄中への手紙
宮本 百合子
08 一九四一年(昭和十六年)
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 230,599 字 · 458 页
釣好きにもガソリンのないことは大打撃で、この頃は船頭が「手漕ぎなんか可笑しくてやれませんや」という習慣になってしまっているから、紀さんなんかもちっとも出られないらしい様子です。
北欧の気候について。雪よ雪よ北の雪よ、程よいときにどんどん降りつもれ。程よいときに、どしどしと雪崩れてとけよ。春の膝までの泥濘にとけよ。
隆治さんが、あなたの手紙なんかを、どんなに心にかみしめているかとよく思います。私の方へは一寸ここ暫く来ません、或はどこかに動いたのではないかとも思いますが。
多賀ちゃんからきょう手紙来。九日の午前二時とかに立って福岡へゆきました。病院の東門前の泉屋という旅舎です、母さんと。そして、やはり手術した方がいいと云われたそうです。旅舎にとまっているの気の毒だけれど、一寸知り人がないものだから、あの方面には。あなたもよくその辺は御存じとかいてありました、そうなわけね、野原のおじさんのときのことで。どの位入院しなければならないのか、出来たらいくらか送ってやりたいけれど、こちらは何しろ目下岩波『六法』、三笠の本がはかどらないでいるという有様で、笑止千万よ。