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ごくちゅうへのてがみ

獄中への手紙

宮本 百合子

08 一九四一年(昭和十六年)

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 230,599 字 · 458 页

青空文庫

何という名がいいでしょうね。S子さんはあれでハイカラ好きで、名の面白さの分りかたが、旦那さんとはちがうでしょう。そういうことも考えなくては。一字が好きというが如しよ。

うちの風邪は大体退治が終りました。国男も一昨日から出勤。太郎も今日から御出勤。

十二月に入るといろいろの税があがるので、この頃は大変らしいわ、今のうちというので。呉服屋なんか。

魚の配給率が、家庭用70%、業務用30%となったところ、鯛、まぐろ、さわら等はみんな三十%の方へまわって、70%の方はろくでもないいわし、いか、くじらの類。売上額は同じですって、70%と30%と。ひどいものね。早くおきて働けばいいんだ、とおっしゃった馬上の人の言葉も、現実にはこうやってあらわれて来るところに、一通り二通りならぬリアリティーあり。

このごろでは勉強部屋だけよそに持つということも大変むずかしくなりました。配給のことで。

宿屋なんかもやはり新しい税の何かにかかるのでしょう。汽車賃もあがります。バスだけ据おきよ。三等は大してあがらず、二等一等はグンとあがるらしい風です。月給は停止令ですが。だからこの頃では、大経営のその制限の明瞭でないところへと却って希望するひとも少くないようです。