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ごくちゅうへのてがみ
獄中への手紙
宮本 百合子
08 一九四一年(昭和十六年)
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 230,599 字 · 458 页
『女性の言葉』と一緒にお送りいたしました。ついでに十六年版の日露年鑑の内容見本も。
三十日(昨日)はいい天気で、私は朝のうちケーテを(二十二枚)書き終って、『進路』を島田へお送りしたりしてそれから青山へ出かけました。花がどっさりあって、賑やかな様子でした。しかしいつもここへ来てつまらないのは、何しろここは中條家の墓ですからね。戸棚です。ちっとも父のパーソナリティも母の気分もない。ですから来るたびに索然として、来ないでもよかった気になるの。太郎と寿江が来るのを永い間待っていました。しーんと日がよく当って暖いところに花の匂りがかすかに漂っていて、スウィートピイやバラのところに早いこと、もう蜂がかぎつけて来て働いています、それを眺めています。それは何だか父らしい活気とも思える。その勤勉な蜂は。
やがて二人来て、太郎もおじぎして、そこへ大瀧の基夫妻が来て、つれ立ってかえる(林町)のに、地下鉄で尾張町へ出て、そこからバスで団子坂上まで。長いのよ迚も。私と寿江子の対立するのは、いつも市電を私がいいと云い寿江子はバスがいいということから。バスちっともいいことないわ、第一木炭ガスがどんなに体にわるいか。