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ごくちゅうへのてがみ
獄中への手紙
宮本 百合子
08 一九四一年(昭和十六年)
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 230,599 字 · 458 页
幸か不幸かそういう傾があらわれても居りますから。概して去年のような忙しさはないでしょう。内部からのテムポで、次々とたゆまず仕事してゆけたらうれしいと思います、本当に去年は忙しすぎました。
今月は短い小説を二つ書くのですが、それで忙しくないとも云えないわねえ。
小説をかく心の内の工合と、評論とは同じようでもあるけれど又何とちがうところがあるでしょう。二つの仕事のむずかしさと苦痛とは、一つの状態から他の一つの状態に移るとき、うつりかたの心理的過程です。これは本当にむずかしくて、或る苦痛が伴っているのね。だから大抵一方にしてしまうのね。小説をかいてゆく心のままで書いてゆけてそれがしゃんとした評論であるということは可能なことなのかしら、どうかしら。それを理想として一致させ得るものなのかしら。させられそうであり、させられそうでなくもあり。いずれにしろ、非常に豊富でつよいメンタルな力がいるのだと思います。小説そのものが質を変化させて来ていることで、一致の可能は増大していることは現に自分について云えるのでしょうけれどね。私の評論に何かの価値の独特さがあるとすれば、それは小説をかく人間が書く生活性であるということ、そしてその生活性の質によって結果されるアクティヴィティであるということだと思いますが、そう批評する人は少い