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ごくちゅうへのてがみ

獄中への手紙

宮本 百合子

08 一九四一年(昭和十六年)

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 230,599 字 · 458 页

青空文庫

二月十日朝

天気がよくて、仕事まとまりがついたら、そういうお客から絶対に保障された二日はたのしみです。又数百頁むさぼれますし。夏から誰も行きません。さぞひどい塵でしょう。あすこには父が私のために買ってくれた机があるのよ。父の植えたバラもあります。丁度あの門からの道がつき当って左へ玄関にかかる右側の花壇に。

風邪大したことがおありにならなくて本当に大成功でした。

二月十日朝 〔巣鴨拘置所の顕治宛 目白より(封書)〕

二月八日  第十信

きょうは私は大変ぜいたくをして居ります。火鉢に火を入れたの! 素晴らしいでしょう。そしてその火の上には鉄瓶がのっていて、しずかにたのしい湯の音を立てて居ります。鉄瓶のわく音は気をしずめます。お茶なんか、先ずすべての手順が、(湯が釜でわく音をきくに至る)気を落付けるために出来ているのね。このお湯のわいている音は一つの活々した伴奏で、私の空想は段々ほぐれて、いろいろの情景をわき立たせて、そこに峯子という若い女やとき子という一種の女や小関紀子という女のひとやらの姿を浮き立って来ている最中です。大変面白いのよ。その女のひとたちはみんな現代の生活を其々に反映しているタイプです。