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ごくちゅうへのてがみ
獄中への手紙
宮本 百合子
08 一九四一年(昭和十六年)
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 230,599 字 · 458 页
ここいらの辺まことに錯交します。ユリの千鳥足。笑いながら、くりかえし考えました。小刻みでぴったりと足を平らに斜面につけてジグザグと正確に、山登りの術にしたがって、のぼりたきものと思います。
そして、ああ、あなたは何とずるいだろうと感服するの。詩集増刷のこと云っていらっしゃるのですもの。それに対して、いくら私だって、詩集は別なんだものとは云えないのですもの。ずるいと思うわ。ほんとにうまくつかまえる。こういう飛躍が科学者の云う天才的な「労作の仮定」というものでしょうか。
十三日に着くようにと書いて下すったのが今朝になったのは残念のようですが、呉々もありがとう。紙の小さすぎることからおこる条件はこの頃やっと私も馴れて、もとのようにその紙のその字の上にないものをいきなりつよく感じとるということもなくなったから、マアましです。けれども、正直なところ、私はほんとに、あなたにすこしコンプリメントをいただくと、しんからうれしいと思います。そういうことでがっつくのはけちくさいと思うけれど、やっぱりこの心持は消すことは出来ないことね。私は却って逆に自分を批評することがあります、私はあなたに自分をいくらかでもいいものとして見せようといつも骨を折るのではないかと。