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ごくちゅうへのてがみ

獄中への手紙

宮本 百合子

08 一九四一年(昭和十六年)

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 230,599 字 · 458 页

青空文庫

でああいう風に、自然発生ながらはっきりはしたのだけれど。もっともっといろいろ書けもしたのに、と。日々の空気がもっと知的なら。まだまだ書きたいことでのこっていることがあります。でも、それもよかったかもしれないわ。だって、ギリシア以来のあれこれをアカデミックであることも知らず余りうんとつめこんでしまうと、生活的感動そのものまで静的なものに化してしまったかもしれないから。ちっとやそっとの下剤ぐらいでは、おなかがきれいになり切れないかもしれないから。

それにしてもドガの、ほんとのことという感銘の絵はいいことねえ。ヴァレリーの『ドガに就いて』という本がありますがどういうものかしら。この間レンブラントを一寸よんで、レンブラントが最後に一緒に暮した女をやっぱりサスキアを描いたように富貴の姿にして、そう幻想して描いたというところ、何だかわかるような下らないような。ねえ。どうして水色木綿の働き着を着て白いキャップかぶって、そして彼にとってなくてはならない女であったその姿のままかかなかったのでしょうねえ。何故「王女のように」飾るのでしょうねえ。レンブラントさんよ。

林町からヴィクターの古いのもって来ようと云っていてなかなか実現しないものだから。