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ごくちゅうへのてがみ

獄中への手紙

宮本 百合子

08 一九四一年(昭和十六年)

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 230,599 字 · 458 页

青空文庫

題のこと、つまりそうなりそうです、どうもいいのがないのですもの。変に弱い題でもこまるし、余り抽象的でもこまるし。私の心持で一番はじめの題は面白いと思うのです。いきなり幅は感じられないけれど、奥ゆきは在る題です。間口が大きくないけれど、扇形にひろがった感じの題ね。

太平洋の波もピンチながら、三角波を立てているというところでしょうね。ルーズヴェルトの一日というのがあって(雑文よ)朝九時から生活がはじまって、事務室までゆく道は車付の椅子にのって運ばれて、(このひとは小児痲痺をやっているのですって)五時すぎまでみっしり働いて、それから九時すぎまで大いにくつろいで、寝室には石でこしらえた豚が三十ほど、いろんなものでこしらえた驢馬が又うんと並べてあって、馬の尻尾の剥製が一本飾ってあるのですって。その馬は彼の父の愛していたレース・ホースでどこかに売られてゆく途中汽車の事故で死んで、尻尾だけがのこったのですって。それを飾ってあるのだって。

チェホフのヤルタ(クリミア)の家を見に行ったら、そこは今博物館なわけですが、書斎にいろんな人の写真が飾られていて、机の上に象牙の象の群を飾ってあって、何だか面白く思いました。