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いしかりがわ
石狩川
本庄 陸男
「石狩川」大観堂、1939(昭和14)年5月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 253,535 字 · 506 页
その日が彼らの新たな日のはじまりなのだから。
そんなに鮮やかに目に残っている目的の地ではあったが、どこをどう行けば無難であるかに就いては、これと云って自信が無かった。あの日はやたらに、草原と山峡を一図に歩いて行ったに過ぎない。そしてその責任は自分に無かった。扈従して行きついてしまったのだ。帰りはこれはまた、憂愁と疲労のつらなりであった。野山の鳥獣をとらえ、その肉を裂いて喰った何日かであった。見覚えのあるのは谷川の流れだけであった。山の姿は眺める位置によって随意に変ってしまう。人間の足で踏みつけた草の茎や葉は、見るまにぴんとはねかえる。夏の草はありッたけの精気で伸びしげっていたのだ。それにも拘らず、一度往復した大野順平らが最も地理に通暁していなければならぬのであった。むろんそれに相違ない。
「戸田どの、ご助力を願いますぞ」
「なんの、なんの、心配無用――」
ひからびたような老人は何の苦もなくそう答えるのであった。この人もまた今のところ、あの少年のように活気に溢れていた。しかも、とにかく彼は、この路びらきに関する限りは先達でもあった。大野順平のかげにかくれるようにして歩いていたが、口だけはいよいよ健在になった。