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どうひょう
道標
宮本 百合子
第一部「展望」筑摩書房、1947(昭和22)年10月号~1948(昭和23)年8月号<br> 第二部「展望」筑摩書房、1948(昭和23)年9月号~1949(昭和24)年5月号<br> 第三部「展望」筑摩書房、1949(昭和24)年10月号~1950(昭和25)年2月号、1950(昭和25)年4月~12月号<br> 資料「展望」筑摩書房、1949(昭和24)年8、9月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 846,457 字 · 1672 页
「構成派の芝居みたいに、いやにどぎつかったり、しゃっちこばって凄んだりしていないのはいいけれど、あれじゃあ、気がききすぎている。理性的な、鮮明な舞台をねらっているのはわかりますがね、――あれじゃインテリくさいや」
黒びろうどの大垂幕を二枚背景としてつかって、その前に工事場の足場を意味する大きい半円形の螺旋の段々がこしらえてある。一段一段とそこをのぼってゆきながら、良人を殺された労働者の妻のアンネットが悲しみと憤りに燃えて仲間の港湾労働者たちに叫びかける大詰の場面は、ピスカトールの妻である女優の大きい身ぶりの線があんまり洗煉されて鋭くて、伸子は、ペイラシェーズのコンミューン戦士の墓についている女の浮彫像を思い出したほどだった。
「パリの観客ということを考えて、ああいう味をつよく出しているのかしら――象徴的だったわね。プロレタリア・シムボリズムってあるものかしら」
「そんなもの、あるもんか」
すぐ素子が否定した。
「シムボリズムは、土台労働者階級のものじゃないでしょう。だから、インテリくさいって、いうのさ」
「でも革命の情熱が、赤旗にシンボライズされていて不自然じゃないわよ。