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どうひょう
道標
宮本 百合子
第一部「展望」筑摩書房、1947(昭和22)年10月号~1948(昭和23)年8月号<br> 第二部「展望」筑摩書房、1948(昭和23)年9月号~1949(昭和24)年5月号<br> 第三部「展望」筑摩書房、1949(昭和24)年10月号~1950(昭和25)年2月号、1950(昭和25)年4月~12月号<br> 資料「展望」筑摩書房、1949(昭和24)年8、9月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 846,457 字 · 1672 页
そのよわりかたは、郊外電車にのりそこなうかもしれないことよりも、よそで泊る用意なんか全くしていない蜂谷の財布のなかの問題のように、伸子には思えた。
「ポート・ド・ヴェルサイユなら、わたしたちのところからじきじゃないのかしら。こうしたらどう? タクシーでいそいで行って見ましょうよ。それで、間にあえばいいし、間に合わなければ又そのときのことで、さ」
「そうしよう!」
三人はカフェーを出るなりタクシーをつかまえた。行くさきをいそいで言葉すくない三人をのせ、タクシーは、明るさとざわめきにみたされているサン・ミッシェルの大通から寂しいリュクサンブール公園の裏通へはいって、ヴォージラールの長い通りをひとすじにヴェルサイユ門まで走った。
素子がタクシーに支払いをしている間に、蜂谷良作は小走りにかけて、そこの広場に一台とまっていた電車に近づいて行った。
「間にあったんだろうか」
「どうでしょう」
あとからそっちへゆく伸子と素子とに向って、駄目、駄目と横に手をふって見せながら蜂谷良作はもどって来た。
「出ちゃったんですか」
「いま出ちゃったんだそうです――よわったな」
ポート・ド・ヴェルサイユからクラマールの住居までの距離がどのくらいあるのか、具体的に知らない伸子と素子とは、駒沢まで帰る玉川電車が出てしまったあとの渋谷で困ったこと