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どうひょう
道標
宮本 百合子
第一部「展望」筑摩書房、1947(昭和22)年10月号~1948(昭和23)年8月号<br> 第二部「展望」筑摩書房、1948(昭和23)年9月号~1949(昭和24)年5月号<br> 第三部「展望」筑摩書房、1949(昭和24)年10月号~1950(昭和25)年2月号、1950(昭和25)年4月~12月号<br> 資料「展望」筑摩書房、1949(昭和24)年8、9月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 846,457 字 · 1672 页
「もうひとところ、下宿であるんだが、いちどきに二つはくたびれるでしょう?」
「それはどのへん?」
蜂谷はポケットからノートブックをとり出して、アドレスをしらべた。
「僕も行ったことはないんだが、キャルディネ通りっていうんだから、どっかモンソー公園とワグラムの中間あたりじゃないのかな」
パリのそんなこまかい通りを、日ごろ市外に住んでいる蜂谷良作が知っているとは思えなかった。凱旋門のそばの貸室を、彼は伸子の電話をきいてから新聞広告で見つけだした。下宿というのも、同様の方法で目星をつけたのだろう。伸子をつれてあんまり迷わないように、彼は地図を見て来たのかもしれなかった。
伸子は、いつも持っている赤い表紙のパリ案内を出しかけた。そして蜂谷からキャルディネという町名の綴りを教わりながら頁をくると、それは親たちの住んでいるペレールと同じ第十七区だった。
「ああ、あった。ここだわ。ホラ、キャルディネ……。近いし、わかりやすいところなのね」
桃色にぬられている地図を見ながらちょっと思案して、伸子は、
「番地教えていただいて、あしたでも、わたし自分で行って見ます」
と云った。