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どうひょう
道標
宮本 百合子
第一部「展望」筑摩書房、1947(昭和22)年10月号~1948(昭和23)年8月号<br> 第二部「展望」筑摩書房、1948(昭和23)年9月号~1949(昭和24)年5月号<br> 第三部「展望」筑摩書房、1949(昭和24)年10月号~1950(昭和25)年2月号、1950(昭和25)年4月~12月号<br> 資料「展望」筑摩書房、1949(昭和24)年8、9月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 846,457 字 · 1672 页
第三章
一
第三章
一
みつきのあいだに、そこの棚、あの隅とひろがっていたペレールでの生活をたたんで、佐々のうちの者たちは荷造りし、約束の日に家の持主であるやせぎすな中年夫人が来て、台帳とひき合わせながらアパルトマンに備えつけの家具、食器類、台所の鍋類までの引き合わせをした。紛失しているものはないか、新しく破損された箇処はないかを調べ、多計代が寝ていた寝室だけのこしてそのほかのすべての室の戸が順々にあけたてされた。
その朝になって、つや子がこわしたままになっている二つの朝食用のコーヒー茶碗が思い出された。それを思い出したのは、つや子でも多計代でもなく、泰造であった。伸子はおおいそぎでタクシーをひろって百貨店へかけつけ、家具しらべがはじまるまでにセーブル製の似よりの品を買って補充した。
多計代がもって帰るフランス人形のことでも悶着がおこった。つや子が欲しいと云って、黒と赤ふた色でカウ・ボーイのなりをした大きいフランス人形を伸子が買って来た。それを見て、多計代もほしいということになり、また伸子は百貨店へ出かけた。そして、母のために、優美だし清楚だとも思った羊飼い娘の人形をもとめて来た。