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どうひょう
道標
宮本 百合子
第一部「展望」筑摩書房、1947(昭和22)年10月号~1948(昭和23)年8月号<br> 第二部「展望」筑摩書房、1948(昭和23)年9月号~1949(昭和24)年5月号<br> 第三部「展望」筑摩書房、1949(昭和24)年10月号~1950(昭和25)年2月号、1950(昭和25)年4月~12月号<br> 資料「展望」筑摩書房、1949(昭和24)年8、9月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 846,457 字 · 1672 页
二
文明社から伸子あてに送られて来ている金を日仏銀行でうけとり、ロンドンにいる和一郎たちのために父がのこして行った金を同じ銀行から送り出した。ペレールあてで来た一番しまいのエハガキに、和一郎は、小枝と二人で、一週一時間、英語の稽古をはじめたことを報告してよこしていた。
「まあ、そんなところでしょう」
そう書いている和一郎の文句には、和一郎と小枝のロンドン生活のなまあたたかい空気を感じさせる印象があった。
その日の換算率は一フランが十二銭だった。文明社から来た金と、泰造が使いのこりだからと伸子にくれたその半額ほどの金とを合わせたものが、これからの伸子の生活費だった。仕事をしなければならない。伸子は経済の点からもそう思い、仕事そのものの点からもそう思った。モスク※(濁点付き片仮名ワ、1-7-82)を出てから、伸子は一つの旅行記さえ書いていなかった。文明社は、伸子が臨時に送る原稿に対しては原稿料を別計算で送って来た。それは、モスク※(濁点付き片仮名ワ、1-7-82)にいたうちも伸子の経済をたすけて来た。パリへ一人のこって、仕事のしたくなる心持になりたい。伸子はそれをのぞんでいたのだった。