轻读日语

轻松读懂日语经典作品

ja-reading.com

轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。

どうひょう

道標

宮本 百合子

第一部「展望」筑摩書房、1947(昭和22)年10月号~1948(昭和23)年8月号<br> 第二部「展望」筑摩書房、1948(昭和23)年9月号~1949(昭和24)年5月号<br> 第三部「展望」筑摩書房、1949(昭和24)年10月号~1950(昭和25)年2月号、1950(昭和25)年4月~12月号<br> 資料「展望」筑摩書房、1949(昭和24)年8、9月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 846,457 字 · 1672 页

青空文庫

八

閑散な店内で行儀よい売子たちは、ふらりと入って来た伸子のベレーをかぶった身なりと、そのあとについている蜂谷良作の服装を見て、格別、彼女たちの立っている場所から近づいて来ようともしない。

「てきめんなものねえ」

店を出て伸子はむしろ感歎するようだった。

「ここでみごとな靴を買ってどこにも苦労の無さそうだった奥さんたち、いまごろアメリカでどうしているんでしょうね……」

マロニエの青葉かげの濃いころ、昼飯後のブルヴァールと云えば色彩的で、パリの午後をぶらつく各国からの安逸な人々によってかもし出される雰囲気に溢れていたものだった。きょう伸子と蜂谷良作とが、観察的にあたりを眺めながら歩いてゆくブルヴァールには、晩秋という季節のしずけさばかりでない沈静がただよっていた。歩道の人通りもぐっとへってはいるが、それより、伸子をおどろかしたのはブルヴァールに向っている有名なカフェーのテラスが、ほとんどがらあきなことだった。いつも空席が見つけにくいほど立てこんでいて、腕にナプキンをかけたギャルソンが軽快に陽気にその間をとびまわっていたオペラの角のカフェー・ド・ラ・ペイにしろ、ずっとはなれてエトワールに近いクポールにしろ、往来を眺めて椅子にかけているような人は、ほんの数えるしかなかった。