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どうひょう
道標
宮本 百合子
第一部「展望」筑摩書房、1947(昭和22)年10月号~1948(昭和23)年8月号<br> 第二部「展望」筑摩書房、1948(昭和23)年9月号~1949(昭和24)年5月号<br> 第三部「展望」筑摩書房、1949(昭和24)年10月号~1950(昭和25)年2月号、1950(昭和25)年4月~12月号<br> 資料「展望」筑摩書房、1949(昭和24)年8、9月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 846,457 字 · 1672 页
「それはそうさ」
同じ姿勢のまま、はなれたテーブルのわきにいる伸子を、蜂谷は例の、眉をしかめるような見かたで見て云った。
「それはそうにちがいないんだ。しかし、実際には、資本主義の枠の内でも過渡的に、部分的に計画性をもち得る面もあるわけなんだ。資本主義だってやっぱり生きているもんだし、生きようとしてあらゆる方法を求めるのは必然なんだから、……」
「すると、それは、資本主義の生態の必然てわけなんだろうか、それとも生きようとする資本主義のたたかいの方法の一つなんだろうか」
「あとの方だね」
「そんなら、つまり改良主義じゃないの。それは『偽瞞的な社会民主主義』であるって、あなたが教えて下さる、そのものじゃないの」
蜂谷良作は、椅子にかけている片膝をゆすりながら、ややしばらくだまっていた。それから、おもむろに云った。
「本質はそういうものであるにしろ、資本主義も自由主義時代がすぎて、計画性をもたなくちゃならなくなって来ているという事実そのものが今日の歴史の因子なんだ。社会主義へ発展すると云っても事実資本主義の中をぬけて行かなけりゃならないんだし、その過程でいま改良主義と云われている方法にもプラスとしての価値転換を与えるべきだと思うんだ。