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どうひょう
道標
宮本 百合子
第一部「展望」筑摩書房、1947(昭和22)年10月号~1948(昭和23)年8月号<br> 第二部「展望」筑摩書房、1948(昭和23)年9月号~1949(昭和24)年5月号<br> 第三部「展望」筑摩書房、1949(昭和24)年10月号~1950(昭和25)年2月号、1950(昭和25)年4月~12月号<br> 資料「展望」筑摩書房、1949(昭和24)年8、9月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 846,457 字 · 1672 页
僕としては、水火をくぐったようなもんだから、これからこそほんとの友情でやって行けると思うんだ。それは否定しないでしょう?」
「そうかしら……」
あのことは、そんなに二人の間で、もうすんでしまったことなのだろうか。二人が別の新しい道の上に出たということが、伸子によくわからなかった。伸子の感覚は、まだどこかゆれている。こんなにして、朝からクラマールの森道へ歩いている二人が、なみな感情だと云えるだろうか。伸子をプラトニックな存在のように自身に思いこまそうとしているような蜂谷、その蜂谷の気もちもふたしかだった。その蜂谷の気もちのふたしかさに対して、伸子ははっきり地上的な自分を対置させて感じている。そこに伸子は自分のふたしかさを感じる――だまって歩きつづけている伸子の腕を、蜂谷がきつく自分の方にひきよせた。
「佐々さんは、まるで天使みたいに無邪気でやさしい時があるかと思うと、悪魔みたいにつめたくて鋭い時がある。どうして? そうかしら、なんて――」
伸子は、息がとまったような気がした。蜂谷の訴えをこめた批評は、つきなみな表現そのもので、じかに伸子のつきなみさをついた。