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どうひょう
道標
宮本 百合子
第一部「展望」筑摩書房、1947(昭和22)年10月号~1948(昭和23)年8月号<br> 第二部「展望」筑摩書房、1948(昭和23)年9月号~1949(昭和24)年5月号<br> 第三部「展望」筑摩書房、1949(昭和24)年10月号~1950(昭和25)年2月号、1950(昭和25)年4月~12月号<br> 資料「展望」筑摩書房、1949(昭和24)年8、9月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 846,457 字 · 1672 页
そして、いつも小切手に書かれていた書体で、木下の弟である会計係の署名がされているのだった。
伸子たちのモスク※(濁点付き片仮名ワ、1-7-82)滞在も、あらまし三年ぐらいと予定されていたことだった。伸子が、帰って来たとき、素子は、大体、ことしいっぱいというところかな、と云った。
伸子は、ぼんやり云い出されたその帰国の考えに賛成もしず、不賛成もあらわしていないのだったが、木下が、自身で責任を負った金を送れないというときになって、会計係の弟に事務一片の手紙を書かせてすましていることが不愉快だった。体裁やで小心な木下の性格があらわれている。その手紙に添えて、会計から送金明細書が送りつけられているのも、伸子をいやな気持にした。その明細書によると伸子が三千幾円かを借りこしていることになっているのだった。
伸子はデスクのわきにある一冊の綜合雑誌を手にとった。その頁のあちこちを開きながら、伸子は実際的に考えているのだった。現在、どの位の金があるかわからないが、金が送られなくなったからと云って、モスク※(濁点付き片仮名ワ、1-7-82)にいたいだけ居ることを止めようとは思えなかった。